多くの食事療法で、有機栽培やオーガニック、ビオディナミなどの栽培方法を用いた野菜や果物、穀物およびその加工品を推奨しています。自然の力を最大に引き出すように栽培された食物のエネルギーと栄養素によって病気を癒すという考え方は食事療法に共通するものです。例えば、野菜の場合、使用される肥料によって葉に含まれるミネラルやタンパク質などの栄養成分が変わります。また農薬の使用量によって、ポリフェノールを始めとするフィトケミカル成分が変化すると言われています。しかし、有機栽培にこだわって食材が偏ったり、食事療法を諦めてしまうよりは、身近なスーパーで市販されている食材をバランスよく摂る方が大切です。
無農薬栽培は有機栽培方法の一つですが、現在では、無農薬や減農薬という表現は原則禁止され「特別栽培農作物」という名称に統一されています。これは、「農産物が生産された地域の慣行レベルに比べて、節減対象農薬の使用回数が50%以下、化学肥料の窒素成分量が50%以下」の作物です。
日本の有機JAS認証は農林水産省が定めた基準を有機登録認証機関によって栽培方法を認証する制度です。有機認証があるからといって、あらゆる農薬を完全に使用しないということではなく、化学合成された農薬や肥料を使用しないというものです。
基準を満たした有機栽培方法でも、化学肥料を使用しないというだけで、有機肥料の質は問わないものから、堆肥に使用するフンも自然肥育による動物由来のみまであります。農薬も有機認証で許容される農薬を使用するものから、完全自然栽培まで幅があります。
自家菜園で育ててみると分かりますが、完全に農薬を使用せず、安全な土づくりから作物を育てるということは大変なことです。有機栽培は、近年、提唱されている持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)との関連でも、国際的に推奨されています。
農林水産省 有機登録認証機関一覧
https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/yuuki_kikan.html
有機JAS認証について
http://organic-cert.or.jp/about_JAS.html
有機表示ができる農薬
http://www.greenjapan.co.jp/yuki_hyoji_noyak.htm
有機栽培とSDGsの関係(有機農業をめぐる事情 農林水産省)
https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/kazyu/r01_6/attach/pdf/index-4.pdf
無農薬のためにフィトケミカルの量が増え、食味が上がるとは限らない野菜・穀物もあります。逆に、化学肥料が抑えられることでエグみが減って食べやすくなる野菜・穀物もあります。
有機栽培認証には遺伝子組み換えではないことが基準にありますが、遺伝子組み換えに似て非なる「ゲノム編集」によって高GABAトマトや肉厚タイなどが開発され、市販にむけての準備が始まっています。健康に良いとされる特定の物質を高めた食品など、消費者がどこまで許容するのか、生産者と一緒になって考える問題です。
(参考)
有機栽培による米飯の食味特性 斎藤ら(2002)岡山、福岡
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcs1927/71/2/71_2_169/_pdf/-char/ja
有機栽培と慣行栽培の比較
ホウレンソウ、コマツナ:辻村ら(2005), 日笠ら(2008). 埼玉
https://www.jstage.jst.go.jp/article/vso/79/10/79_KJ00004407273/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/vso/83/9/83_KJ00005757878/_pdf
チンゲンサイ:徐ら. 長野
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcsproc/221/0/221_0_296/_pdf
高GABAトマト(ゲノム編集)
https://bio-sta.jp/news/administration/2152/
京鯛 肉厚タイ(ゲノム編集)
https://www.kyoto-u.ac.jp/kurenai/201809/taidan/
ゲノム編集技術応用食品等(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/bio/genomed/index_00012.html
食事療法の多くは、なるべく自然に近い形で加工度の低い状態で摂ることを推奨しています。穀類も精製度の低いもの、調理法も低温調理が良いとされ、いわゆる化学的な添加物の多い加工食品は避けるべきとされています。
とはいえ、何もかも手作りできれば良いですが、なかなかそうもいかない…という人は、最近では、安全な食を求める消費者に応えて、無添加、あるいは合成添加物を極力抑えた加工食品、冷凍食品も増えていますので、時々そうした食品の利用は良いでしょう。ただし、病気の症状があって、治療のために食事療法を開始する人は、まずは、それぞれの食事療法が定めるとおりの食材、調理法に取り組むことをお奨めします。
緑黄色野菜中心に、糖度の高すぎない果物、炭水化物は無精白、油脂類は控えめにいろいろな種類を摂りましょう。
食事療法に共通するのは、緑黄色野菜、とくにアブラナ科の野菜です。トマト、キュウリ、ジャガイモ、ニンジンなど定番野菜、リンゴ、オレンジ、キウイなどのフルーツも推奨している食事療法は多くありますが、現在日本で販売されている野菜には、品種改良によって糖度が高くなっているものが多くなっています。海外のオーガニック・マーケットで売られているトマトやカボチャ、ジャガイモは日本のように甘くないものが多いです。日本の野菜は全体的に甘いことを意識して、甘味の味付けを控えるなどの工夫をすると良いでしょう。
キノコ類や発酵食品については、食事療法によって考え方に差があります。病気で消化能力、とくに腸の吸収力が落ちている場合は控えた方が良いでしょう。予防としての食事療法で、消化能力に問題がない場合は推奨される食材です。
油脂については、亜麻仁油やエゴマ油、オリーブオイル、ココナッツオイルなどを酸化しないように低温で使用するのがお奨めです。揚げる、炒めるなどの調理の際は高温でも酸化しにくいオリーブオイルなどを使用します。植物油を推奨する食事療法が多いですが、DHA、EPAなどを含む魚油(青魚やサケ・マスに多い)は適度に摂る方が良いでしょう。
美味しいものは美味しく感じるように調理・調味されています。ファストフード、スナック菓子、和菓子、ケーキなど、食べなくて良いものです。病気の治療として食事療法に取り組む場合は、こうした食品はがまんしましょう。予防として取り組む時は、時間と量を決めて、従来の半分、1/4…継続できるぎりぎりの量まで減らしましょう。
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